物語

主人公・荒岩一味役を演じる山口智充さんと、原作者であるうえやまとちさんとのWパパ対談が実現! ドラマの撮影裏話や“食”へのこだわり、福岡への愛や子育て論……。初対面とは思えないほど白熱した対談の模様を完全版としてご覧下さい!

体型が近いのがいい!(うえやま)

アゴは真似できません(山口)

うえやま 「荒岩役はぐっさんしかいないと思っていました」

山口「そうですか! その言葉を聞けただけでうれしいです。実は自分で言うのもあれですが、僕もぴったりだと思っていたんです。ちなみにどこらへんが気に入っていただけたのでしょうか?」

うえやま 「まず体型が近い(笑)」

山口 「そこですか(笑)。もりもり食べていてよかったです」

うえやま 「それとぐっさんは柔らかさと男らしさが両立しているところがいいなと思ってね。もともと『クッキングパパ』の発想は身体の大きなゴリラみたいな男が、実は料理が作れて優しいというギャップがあったらおもしろいだろうというのが原点ですからね。要は新しいタイプのカッコいい男を描きたいと思って始めたんです。ただ、連載開始当時は男が料理をするっていうだけでも『なんで?』っていう時代だったので、読者に受け入れてもらえるか不安まじりのスタートでしたね」

山口 「僕のなかでも荒岩は“理想の男性”ですね。素の山口智充としても目指したい人物です。父親としても男としてもカッコいいですよね。普段の山口智充からすうっと入って気持ちよくなれる役です」

うえやま 「今回、荒岩を演じられていかがでしたか?」

山口 「原作の荒岩はそんなにべらべら喋るイメージじゃなかったので、オファーを受けたときは出番が多くてセリフが少ないっていう一番最高なパターンだと思ってたら、ドラマは意外とセリフが多くて……」

うえやま 「ははは。役作りは何かされたんですか?」

山口 「体型はそのまま(笑)。僕はクセっ毛なので前髪がどうしても荒岩みたいにシュッとならないんですよ。自然に見えるようにストレートパーマを当てたくらいですね」

うえやま 「そのままで荒岩みたいですからね。私もアゴを出せとはいいません(笑)」

山口 「それはよかった(笑)。僕も監督からそれを言われたら喋りづらいな~と思ってたんです(笑)」

うえやま 「荒岩のアゴは漫画に描くときも難しくて真っ正面の顔はこれまで2回くらいしか描いたことがないからね」

子供たちとは本当の家族のように接していますよ(山口)

40巻くらいに戻ったようだね(うえやま)

うえやま 「現場を見学させてもらいましたが、ロケならではの緊張感が伝わってきました」

山口 「魚のイキが悪いからもう一回撮り直そうとか、糸が絡まったからもうワンテイクとか。手作り感があって人間が作ってるなあと感じます」

うえやま 「漫画の場合は描き直せば済むけど、実写の場合はもう一度最初からやり直しですからね」

山口 「そういえば先日、縁側のシーンの撮影をしたんですけど、当初はスタジオにセットを作って撮影する予定だったんですが、監督の意向でロケになったんです。だけど、そのシーンがロケをしたおかげでもの凄くいいシーンになったんですよ。遠くの方に明かりがみえて、夕方の気持ちのよい潮風がひゅっ~って吹いて来て、終わった瞬間、スタッフから『いいシーンになったよ』と声をかけてもらって。ロケの重要さと気持ちよさを堪能させてもらいましたね」

うえやま 「監督がロケを選ぶ気持ちはわかる気がします。スタジオでは作れない雰囲気を出したかったんでしょうね」

山口 「僕は個人的に外が大好きで、とにかく外に出ていたい人間なんでうれしかったですね。撮影の待ち時間も苦じゃないし。スタッフの人たちは気を使ってくれてるんですけど、むしろ待ち時間も楽しんでますね」

うえやま 「そのシーンを早く観たいですね。ところで他のキャストのみなさんとはいかがでしたか?」

山口 「みなさんいい方ばっかりで現場はアットホームですね。特に荒岩の母・カツ代役の中尾ミエさんがハマり役で、中尾さんそのものじゃないかなっていうくらい。芯があってガ~ッて言いたいことを言うけれどもあたたかく包んでくれる。原作のまんまですね。とにかくカメラが回っていないときでも家族でいろいろ話してるんで、アットホームな空気が画面にそのまんま出ていると思います」

うえやま 「まこととみゆきとはどうですか?」

山口 「まことが小学生、みゆきが4歳っていう設定なんですが、カメラが回っていないときでも『お父さん』って呼んでくれるし、逆にこっちが乗せてもらってますね」

うえやま 「ドラマの子供たちは小さいので、僕からすると40巻くらいに戻った感じかな」

福岡のおすすめ料理と言えば?(山口)

やっぱ魚料理やね(うえやま)

うえやま 「ドラマは原作通り福岡で撮影してくれていますが、山口さんは福岡とご縁は?」

山口 「福岡の糸島郡ってところに親戚がいるんです。漁師をやってるんです」

うえやま 「あのへんね、わかりますよ」

山口 「なので福岡には子供のときからちょくちょく来ているので馴染みがあります。それに、もともと山口家は九州が多いんですよ。なので“戻ってきた感”っていうのがありますね。九州はなんかパワフルなところが好きです。先生はずっと福岡なんですか?」

うえやま 「僕は生まれも育ちもずっと福岡です。この街が気に入ってるんでしょうね。東京にもちょっと住んでいましたけど、すぐに戻ってきましたからね」

山口 「福岡でどこかおすすめの場所ってありますか?」

うえやま 「ドラマの冒頭でも出てきますが、能古島はとてもいいところですよ。春には花見ができたりしますし」

山口 「撮影で博多にはよく来るんですけど、あんまりゆっくり観光っぽいことはしたことないんですよね。僕のなかでは食べ物がおいしいっていうイメージが強いです」

うえやま 「もつ鍋とかラーメンのイメージは強いね。でも、僕が連れて行くとしたら魚がおいしいお店に連れていきたいですね。福岡には新鮮な材料がいっぱいあるから」

山口 「確かにラーメンも有名ですけど、魚のイメージも強いですね。今度ぜひ連れて行ってください」

うえやま 「もちろん。ドラマで出てくる料理は脚本に合った料理を原作から選んだのですが、「鯛茶漬け」(単行本28巻収録)はおすすめですよ。あれは壱岐島(いきのしま)で漁師をしていた人から教えてもらったんですけど、ワサビとかシソとか薬味を入れないほうがおいしいんです。鯛そのものの味が出るのでぜひそのまま食べてもらいたいね」

私はただの“食いしんぼ”。
それが高じて作るのも好きに(うえやま)

“おいしい”と“めっちゃおいしい”
僕の味覚はそれしかないんです(山口)

山口 「実際の僕はなかなか料理をする暇がないんですけど、先生は実際に漫画に登場する料理を作られるとか?」

うえやま 「そうですね、実際に作ったものを絵にします。でも、山口さんも料理をされたらきっと上手だと思いますよ」

山口 「僕の勘ではやれば上手いと思うんですけどね~。イメージだけですけど(笑)」

うえやま 「僕は食べるのが大好きだったから作るのも好きになったというだけ。強いて言うならB級グルメというところでしょうか。単に“食いしんぼ”ですよ」

山口 「僕もグルメじゃないんです。グルメっていう人たちの舌は逆に狭いと思うんですよ。食いしんぼのほうが何でも食べたいと思うから味覚の幅が広いと思うんです。人がマズいっていうものもそんなにマズくないと思って食べれるって幸せなことだと思うんですけどね」

うえやま 「それはそうだね」

山口 「グルメの人が『この味じゃないとダメやねん』というこだわりってすごく狭く感じるんですよ」

うえやま 「なるほど。要するに味覚の幅が広いから、それだけ他の人より幸せなんだっていうのはいい言葉ですね。おっ、なんだかそれで1本描けそうな気がしてきましたよ」

山口 「そうですか~。ぜひ描いてください。よく、『ぐっさん、そんなもんよくおいしそうに食べるなあ』って言われるんですけど、僕の味覚は“おいしい”と“めっちゃおいしい”しかないんです。もともと食べ物として出てくる食材はマズいわけがないと思ってるんで。そりゃあ好みはあるでしょうけど」

うえやま 「荒岩も人の料理はけなさないですね。4巻に描いてますけど、出された料理は『うまいうまい』って言って食うんだって。それが一番男らしいんだって言ってますね」

山口 「その通りだと思います」

うえやま 「山口さんは食事をするときどんなシチュエーションで食べるのが贅沢だと思われます?」

山口 「僕はその土地のものをそこで食べるっていうのが贅沢だと思いますね。もし、自分がお店をやるとしたら、その土地でしかできない料理店をやりますね。お店ってそこが誇りだと思うんですよ。その場所にある意味というか。今は情報化社会なのでどんな山の中で営業していても、そのお店がおいしいとなったらみんな来ますよ、絶対」

うえやま 「『クッキングパパ』の98巻は沖縄を舞台にしているんですけど、やっぱり沖縄料理も沖縄で食べないとね。オリオンビールも味が全然違いますよ。東京や福岡で飲むより那覇空港で飲んだオリオンビールのほうが絶対においしいですから(笑)」

山口 「やっぱり嗅覚なんだと思います。口とつながってる鼻がその土地の匂いを嗅いで、空気を吸いながら食べてるからおいしいと感じるんでしょうね。あと、温度とか湿度も関係あると思います。めっちゃ暑いからって喫茶店に入ってかき氷食べてもあんまりおいしいとは思わないけど、外でかき氷食べたらめちゃくちゃおいしいっていうのと同じですよね。かき氷は絶対炎天下で食べるほうがいい。食事って口だけで食べてるわけやないんやなあと思います」

うえやま 「それは絶対ありますよ」

『クッキングパパ』には子供たちから
もらった話がいっぱいありますよ(うえやま)

子どもは親の背中を見てると思うので、
自分がしっかりしなきゃと思いますね(山口)

山口 「『クッキングパパ』にはまこととみゆきという子供が出てきますけど、先生も一男一女のお父さんなんですよね?」

うえやま 「そうです。とはいっても僕の子育てはほとんど終わりました。ふたりとももうハタチを過ぎてますから」

山口 「そんなに大きいんですか?」

うえやま 「ちょうど連載がはじまった年に娘が生まれたんです。第1話を描きながら産院にお見舞いに行ったのを憶えてますね」

山口 「まさに連載と一緒に大きくなられたんですね。子育てにおいて何かルールのようなものを決めたりされていたんですか?」

うえやま 「子育てをしたというよりは、子供たちからいろんなものをもらったという思いのほうが強いですね。僕は漫画バカの人間だったから、子供ってどういうものかよくわからなかったんですよ。子供が生まれる前までは、どう接していいかもわからなかった。でも一度抱っこしたらすごくかわいいと思っちゃった(笑)。『クッキングパパ』のなかにも子供たちからもらった話はいっぱいありますよ」

山口 「いい話ですね。うちの場合はまだ子供たちは小さくてまだまだこれからです」

うえやま 「かわいい盛りなのに忙しくて家に帰れないんじゃないですか?」

山口 「そうですね。だから仕事以外のときは家にいるようにしてます。子供は親の背中を見て育つっていいますからね。親になったからにはキチンとしなければと思います。ゴミのポイ捨ても子どもが見てると思ったらやらないだろうし。喋り方にしても親がちゃんとしていれば子供も自然ときちんとなっていくと思うんです」

うえやま 「ある意味、子供は自分の鏡みたいなものだからね」

山口 「ええ。それと僕は子供と接するときに上下関係っていうのはないんです。たまたま先に生まれているだけで全部横並びだと思うんです。逆に僕ができないことを子供はやったりするし。例えば『こんな笑顔ようせんわ』っていう笑顔を見せてくれたり。今が一番かわいい時期と言いますけどそんな笑顔を見てると、ずっとかわいいんちゃうかなって思います(笑)」

うえやま 「子どもの笑顔にかなうものはなし。いくつになってもかわいいですよ(笑)」

『クッキングパパ』は寝る前に気持ちよくなれる子守唄を目指してます(うえやま)

自分が楽しい空気を作って楽しませたい。平和主義者なんです(山口)

山口 「『クッキングパパ』はどんな気持ちで描かれてるんですか?」

うえやま 「子守唄みたいなものを描こうとだいぶ前から意識してます。寝る前に1本読むと心地よく眠れるような。山口さんはテレビで観ていても、サービス精神が旺盛ですけど、小さい頃から芸人を目指してたんですか?」

山口 「僕の原点は小学校の給食時間なんです。クラスで常におどけている奴っていたでしょう? それが僕ですね。牛乳をぶくぶくと吹かすのが大好きだったので、『オレ、こんなんできるで~』って班のみんなに見せてたんです。それがいつの間にかクラスになって、クラスが学年になって、学年が全校生徒になって、卒業したらそれが公民館になって市民体育館になって、この世界に入ってホールになってみたいな。それがずうっと続いているだけです」

うえやま 「みんなを喜ばすのが好きだったんですね」

山口 「とにかく自分が作った楽しい空気の中に自分がいれることが幸せなんですね。だから僕、人のために笑わせたいと思ったこと一度もないんです。見ている人がいなくても一人でもやってますから(笑)」

うえやま 「誰かのためじゃなくてね」

山口 「よくファンレターとかで『元気をもらいました』とか『すごく悩んでたけど解決しました』っていうのをもらうんですけど、『よかったやん』とは思いますけど、でも僕はあなたのためにやってるわけやないですよっていうドライなところもあるんです。僕が勝手に楽しんでるだけなんで、それを楽しんでもらえたならよかったっていう。まあ、みんな楽しく行こうや、それでええやん、っていう平和主義者ですね、僕は(笑)」

うえやま 「荒岩も平和主義者ですね。僕が『クッキングパパ』を描き始めた頃、漫画に出てくるサラリーマンっていうのは戦う主人公が多かったんです。ライバルをたたき落として自分が上にあがっていくという。そういう意味では荒岩は戦わないサラリーマン。料理を作ってみんなでニッコリするような」

山口 「やっぱりぴったりの役でしたね(笑)」

うえやま 「いやあ、こうやってお話していると、本当に荒岩と喋ってる気がしてきましたよ。ドラマは凄くいいものができそうですね。舞台が福岡っていうのも楽しみだし、皆さんもぜひご覧になってください」

山口 「本当にハッピーな心温まる作品になったと思います。今はスタッフ、キャストみんなで心を込めておいしい料理を作ったので、ぜひ召し上がれっていう気持ちです。そしてドラマがおいしかったという人はぜひ“おかわり”というか、シリーズ化を希望してください!」

うえやま 「シリーズ化できるといいですね。レシピは1000以上ありますから(笑)」


(7月上旬 福岡ロケの合間にて)