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福岡市地下鉄「七隈線」延伸開業も…西鉄バス「大幅減便」 住民は期待と困惑 背景に厳しい経営環境


2023/03/16 17:15


福岡市地下鉄「七隈線」は3月27日に延伸開業を迎え、利便性の向上に期待が高まっています。

これにともない、西鉄は9日、バスのダイヤ改正を発表し、地下鉄開業の2日前、25日から計112便を減らすことを明らかにしました。

交通環境の変化は、我々の生活にどのような影響があるのか?

住民たちの本音を取材しました。



旨味の詰まった豚骨スープに、大きめのチャーシュー。

福岡市早良区にある「ふくちゃんラーメン」は、連日行列ができる人気のラーメン店です。

◆来店客
「いろいろ食べたが、ここが一番」

◆来店客
「埼玉から来たが、ここまで来る甲斐がある」



遠方から訪れる人も絶えない人気店ですが、この春、期待していることが-

◆ふくちゃんラーメン 榊伸一郎さん
「やっぱ地下鉄(延伸)。(博多駅から)乗り換えなしで来られるのは(場所を)お客さんに説明しやすい」

心待ちにしているのが、3月27日に迫った福岡市地下鉄「七隈線」の延伸開業です。

店から徒歩7分のところに地下鉄「賀茂駅」があり、七隈線の「博多」-「天神南」間の運行が始まれば、博多駅方面から乗り換えなしで来店することができます。

喜びの声が上がる一方で、こんな声も-

◆星の原団地町内会 原川輝代 会長
「バスの減便が一番痛手」

延伸開業に伴う「バスの大幅減便」。

交通環境の変化に戸惑う住民の本音を聞きました。



◆西鉄 自動車事業本部 中倉淳一 営業部長(3月9日の会見)
「今回、大規模なダイヤ改正を行います」

県内でバスを運行する西鉄は9日、春のダイヤ改正を発表。

北九州地区では一部区間で路線を廃止。

久留米地区でも一部、減便が予定されています。



利用者が少ない地域での廃止・減便が続く中、人口増加が続く福岡地区でも、大幅な減便を決定。

その理由は…。

◆西鉄 自動車事業本部 中倉淳一 営業部長
「地下鉄七隈線が延伸開業することで、人の流れ・移動に変化があるだろうと」



西鉄が理由の1つに挙げたのは、3月27日に迫っている地下鉄七隈線の延伸開業です。

七隈線はこれまで「天神」止まりでしたが、延伸により、福岡市西南部から博多駅まで乗り換えなしで結ばれることになります。

◆西鉄 自動車事業本部 中倉淳一 営業部長
「並行する地下鉄七隈線は320便運行するため、並行区間については地下鉄利用に相当転移がある想定」

バスの利用者は1日7000人減少すると試算する西鉄。

そのため、福岡市都心部を回る循環バス「キャナルシティライン」を廃止。

加えて、博多駅と七隈線沿線を結ぶバス路線で大幅な減便を実施します。



◆川崎キャスター
「福岡市早良区の早良街道に来ています。通り沿いには地下鉄の駅もあって、近くではバスも走っていますが、こちらを通るバスが3月25日から減便されることになります」

15日に訪れたのは、福岡市早良区の野芥地区。

七隈線の駅があるため、今回、バスの減便対象となった地域です。

◆川崎キャスター
「バスが減便されるが…」
◆バス減便地域の住民
「私はあまり不便は感じないだろう。(減便は)仕方がないのかな。だって(乗車のない)空の便が走っている」

◆川崎キャスター
「普段バスは使う?」
◆バス減便地域の住民
「あまり使わない、最近は。(使うのは)地下鉄ばっかりで。早いですもんね」

地下鉄とバスの所要時間・運賃を比較した場合、「福大前」駅や「野芥」駅など、遠くなればなるほど地下鉄の方が時間は短く、運賃も安くなります。



「バスの減便はやむを得ない」という意見が聞かれる中、困惑の声が上がっている場所がありました。

◆赤木アナウンサー
「地下鉄延伸のメリットは?」
◆星の原団地町内会 原川輝代 会長
「私たちにはほとんどない」

福岡市中心部から車で20分の場所にある「星の原団地」。

総戸数は2000戸、空室が少ないという人気の団地です。



◆赤木アナウンサー
「福岡市早良区の星の原団地のバス停です。こちらにはダイヤ改正のお知らせが貼られています」

星の原団地を起点とし、天神や博多駅など都心部を結ぶ3番系統のバス。

七隈線沿線を走るため、今回、上下31便を減らす予定です。



到着したバスを見てみると-

◆赤木アナウンサー
「乗客の数多いですね。10人以上乗っていました」

◆赤木アナウンサー
「こちらからバスはよく利用する?」
◆バス利用者
「利用します。自転車乗らないから助かっている」

◆バス利用者
「仕事行く方が寒い中待っている」

◆バス利用者
「病院はバスに乗って行っている。地下鉄が開通してとても便利になった人もいるが、その反対では困る方が出てきている」



幅広い年代の“生活の足”となっている星の原団地のバス路線。

バス停は団地の一角に設置してありますが、地下鉄の最寄り駅「野芥」駅は少し離れた所にあります。



◆赤木アナウンサー
「星の原団地から最寄りの野芥駅まで歩くと実際どのくらいかかるのか、歩いてみたいと思います」

幅の狭い、歩道を歩いていきます。

◆赤木アナウンサー
「段差を繰り返すような道になっています。年配の方はこういった道はちょっとしんどいでしょうね」

さらに進んでいくと、歩道のない、狭い道を歩いていきます。



◆赤木アナウンサー
「さあ、やっと着きそうですよ。地下鉄のマークが…」

ようやく、最寄りの野芥駅までたどり着いた赤木アナウンサー。

果たして、どのくらいかかったのでしょうか。

◆赤木アナウンサー
「18分。途中、道の状況を見ましたが、段差があったり、傾斜があったり、私でもこの18分の道のりは結構長かったと思う」

赤木アナウンサーの足でも片道18分かかった地下鉄の駅までの道のり。

団地の高齢化が進む中、町内会長は不安を募らせています。

◆星の原団地町内会 原川輝代 会長
「星の原団地は高齢化率が39%を超えている。車や歩きが難しい人も増えている。バス利用者がこれからも増えていくと思うので、減便されるとみんな困る」



<川崎キャスターによる解説>

「減便は仕方ない」という声も多かったが、一部の地域の人にとっては生活への影響が大きいのが現実です。

減便の背景には利用者数の低迷があります。



西鉄バスのコロナ前、2019年の利用者数を100%とした場合、まずコロナ禍に入った2020年度は73%にまで落ち込みました。

その後、2021年度以降も回復できずに、コロナ前の2〜3割減が続いていて、今年2月も77%に留まっています。

こうした中で、七隈線の延伸開業で路線バスの利用者がさらに1日7000人減ると試算されているので、大幅な減便に踏み切りました。

バスの減便はコロナ禍以降、全国的に相次いでいます。



そして、もう一つ大きな問題が、乗務員です。

乗務員の拘束時間をめぐり、国の基準が見直されます。

1日の拘束時間は、これまで最大16時間(15時間超は週2回まで)。

来年4月以降は最大15時間(14時間超は週3回まで)。

このため、今の運行体制を維持できないので、減便の必要性が出てきました。

まずは事業者が給与の引き上げなど待遇改善に取り組んで、ドライバーをたくさん確保するという「自助努力」が重要ですが、路線バスは生活の基盤なので、場合によっては公的な支援も必要になりそうです。

人口減少に向かう日本社会で地域の足をどう維持していくか、待ったなしの課題となっています。

(TNC報道ワイド「記者のチカラ」 2023年3月15日OAより)
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