2022/05/12 19:30
福岡県内で相次ぐ豪雨被害 まもなく梅雨 各自治体の防災・減災の備えは
沖縄や奄美地方ではすでに梅雨入り。
そして、福岡もこれから本格的な雨のシーズンに突入します。
ここ数年、大規模な豪雨、浸水被害に相次いで見舞われてきた県内。
被害を繰り返さないため、そして被害を減らすための対策が進んでいます。
雨模様となった12日の福岡県内。
本州の南にある前線の影響で、雨脚が強まったところもありました。
14日にかけて九州南部を中心に活発な雨雲が次々と流れ込む予想で、警報級の大雨となる恐れがあります。
そうした中、これからまもなくやってくる本格的な雨のシーズン。
ここ数年、県内でも相次ぐ豪雨災害に備え、自治体では対策を進めています。
◆記者
「大牟田市の三川ポンプ場です。2年前の豪雨では、こちらのポンプ場が浸水し機能が停止したことで、この辺り一帯で内水氾濫が起きました」
2020年7月、大牟田市を襲った記録的な大雨。
わずか2日間で降った雨は700ミリ近くにもなり、住宅の浸水被害は、およそ2500棟、逃げ遅れた高齢者2人が亡くなりました。
特に大牟田市南部の三川地区は、広い範囲が浸水。
小学校も例外ではなく、不安な一夜を過ごした子供たちは、自衛隊のボートで救助されました。
被害が拡大した理由の1つ、それは、排水機能を担う三川ポンプ場の水没でした。
ポンプが停止したため、降り続く大量の雨水を処理できず、内水氾濫につながってしまったのです。
あれからおよそ2年ー
三川ポンプ場は、対策を整えています。
◆大牟田市企業局 飛松修一課長
「こちら奥に、電気の盤がありますけども、下の方に横にラインが付いておりますが、そこまで浸水したというラインになっております」
◆記者
「かなりの高さまで浸水があったんですね」
その高さ、およそ90センチ。
配電盤も水に浸かりました。
そこで、市では…
◆大牟田市企業局 飛松修一課長
「こちらの方に新たにコンクリートで土台を作りました。その上に、電気の盤を設置して、電気盤の嵩上げということで対策しております」
配電盤を記者の肩の位置、1.3mの高さに設置し、浸水対策を行っていました。
さらに…
◆大牟田市企業局 飛松修一課長
「排水機能の増強といたしまして、仮設ポンプを2台新たに設置しております」
かつてのポンプ12台に、仮設ポンプ2台を追加。排水機能を1割ほど高めています。
ただ市は、費用もかかる施設などの充実には限界があるとしています。
◆大牟田市企業局 飛松修一課長
「市民の皆様の方でも豪雨の際につきましては、気象情報や避難指示とかの災害の情報を適宜取得してご自身の命を守る行動をとっていただきたい」
一方…
2020年7月―
◆記者
「筑後川に連なっている支流川と道路が判別できない場所があります。あふれ出た水が近くの住宅地に流れています」
ここ数年、毎年のように浸水被害を受けている久留米市。
度重なる被害に、ある決意を固めた男性がいます。
国内有数のパクチー生産者、香月勝昭さんです。
◆香月菜園 香月勝昭さん
「ここは内水氾濫が起きやすくて、5年連続6回ほど被害を受けていますね」
2021年までの5年間、農業用ハウスが浸水し、育てていたパクチーがほぼ全滅。
その間の被害総額は、8000万円にものぼるといいます。
◆香月菜園 香月勝昭さん
「パクチーは水没してしまうと出せないので、ここ5年は異常というか、毎年この時期になると夢に出るくらいの…」
毎年繰り返される被害に、香月さんはある計画を進めています。
◆香月菜園 香月勝昭さん
「ここが新しく建てたハウスですけど、だいたいここで1~1.5mぐらい、あそこのハウスより高いです」
香月さんは、2021年から高台に農業用ハウスを増設しています。
◆香月菜園 香月勝昭さん
「ここから見えるところは被害を受けたけど、ここだけ生き残りました」
ただ、多額の資金が必要な高台への増設。
香月さんのハウスの9割は依然、低い場所にあり、大雨への不安を払拭するにはほど遠いのが現状です。
◆香月菜園 香月勝昭さん
「私たちは引っ越しがなかなか難しいので、来ないことを願うしかない。天に祈るような状況です」
一方、久留米市のお隣、筑後市。
浸水対策に、2020年からあるものの活用を開始しました。
◆記者
「筑後市の中央公民館に来ています、こちらの倉庫の中には、赤い板のようなものが準備されています。この板が浸水対策として大きな力を発揮してくれるんです」
公民館の倉庫にあったのは、止水板「ボックスウォール」。
高さ60センチ、幅は1メートルあるL字型の止水板です。
その特徴が…
◆筑後市 水路課 下川大輔さん
「板は5kgほどと軽量なものになっていて」
◆記者
「あ!そうですね。しっかり支えれば、私でも運ぶことが簡単にできそうです」
土のうなどに比べて軽量で持ち運びが簡単です。
また、気になる強度の試験映像では、流れ込む水を抑え込み、放水の水圧にも耐えています。
市は、ここ10年で2度氾濫している山ノ井川に近い中央公民館に、この止水板を配置。
避難所への経路の確保に役立てています。
◆筑後市 水路課 下川大輔さん
「ボックスウォールは道路のガードレールに沿って、大雨時に設置している」
◆記者
「どのぐらいで設置できる?」
◆筑後市 水路課 下川大輔さん
「100枚程度であれば1時間程度で設置できる。土のうを同じ長さ並べようと思えば、1日程度はかかると思う。1日かかっていたものを1時間程度で設置ができるので、それ以外の災害対応に時間を使うことができるようになっています」
ここ数年、毎年のように雨による災害が起きている福岡県内。
梅雨入りを前にいま一度、雨への備えを考え、できる手を打っていく必要があります。
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