番組審議会から(第622回)
番組審議会から(第622回)
第622回番組審議会
議題 | 第29回FNSドキュメンタリー大賞出品作品 「カカ・ムラド~中村哲の信念~」 2020年6月28日(日)25時00分~25時55分放送 |
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出席委員 | 藤 井 克 已 委員長 進 藤 卓 也 副委員長 石 村 一 枝 委員 喜多村 浩 司 委員 伊 藤 真奈美 委員 舘 賢 治 委員 森 亨 弘 委員 田 中 徹 委員 中 村 ク ミ 委員 |
2019年12月4日。アフガニスタンで銃撃されて死亡した中村哲医師。
徹底した「現場主義」そして「利他の精神」を持ち、医師でありながら白衣にの代わりに作業着に身を包み、晩年は、鋭いメスではなく、大きなショベルカーを扱うことの方が多かった。
そして日本から遙か6300キロのアフガンの乾燥した大地に水と緑をもたらした。
武力によらない平和の実現を目指し、難民支援にも全力を注いだ彼の現地での愛称は「カカ・ムラド」 (“中村のおじさん”を意味する)
アフガニスタンの復興に捧げた「自己犠牲」の生涯。
彼を突き動かしたその信念とは一体何だったのか?
そして、中村哲医師がアフガニスタンと日本に遺したものとは、何なのか―。
テレビ西日本の秘蔵映像とアフガニスタンの最新の現地映像を含めて、中村哲医師の人生に迫る。
本議題に入る前に藤井委員長より進藤副委員長の選任がなされた。
番組審議委員からは
- 「絵本の語りで始まることで、視聴者がスーッと番組に入りやすいのかなと思いましたし、絵本の最後の部分を使って、これからも中村医師の思いが続いていくことを見せて終わっているあたりは、非常にストーリー性もあって、こだわった編集で見やすい内容であったと思います」
- 「私は番組審議委員を3年弱させていただいていますけど、これまで拝見した中で一番秀逸な番組だったかと思います。大変失礼ですけど、もう少し老練なディレクターの方が作られたのかなと思っていたら、非常に若い方でびっくりしました。この番組を制作された方々には最大級の賛辞を送りたいと思います」
- 「今回の番組を見て初めて、番組の中で「源流」と言われている中村医師の活動のルーツ、原点が理解できまして、10年前に感じていたもやもやが一気に解消されました」
- 「この番組を見た視聴者は、表層的な活動の捉え方ではなくて、思いとか本質、それこそ番組で言われている「源流」を理解できたのではないかと思いました」
- 「番組の中に出てくる中村さんの言葉も非常に印象的なものが多かったと思います。「平和とは観念ではなく、実態である」とか「モノが壊れることによって人が育つ」といった言葉が非常に心に残りました。ノートに書きとめて今後も残していこうと思っています」
- 「今後の活動の広がりの一助になる番組だったと思います。これはテレビ西日本にしかできない番組だと思いますので、今回のような番組作りをこれからも期待しています」
- 「ディレクターの言葉として「中村哲医師の根幹を描く番組制作を心掛けました」とございましたけれども、その意図は十分に達成できていたなと感じました。一言で言うと、非常に見応えのあるドキュメンタリーだったと思っております。中村医師が成し遂げた功績を紹介するだけではなく、本当に骨太の作品だったなと感じております」
- 「恐らくTNCには、中村医師の取材の動画記録はたくさんあるのではないかと思いますけれども、今回はそれだけに頼らず丹念に新たな取材を積み重ねられたという、その努力に特に感心いたしました」
- 「藤田看護師の「そこまで掘り下げるのが医者の仕事ではないか」という中村医師のコメントの紹介だったり、牧師さんの「苦しみや困ったことから逃れたい信仰とは全然違う」といったコメントが、中村医師の信念や人となりをさらに深く描き出すのに貢献していたのではないかと感じました」
- 「TNCらしいなと思ったのは、福岡にいらっしゃる親戚にも複数インタビューをされたり、山田堰の話だったり、玉井金五郎・マンご夫婦の功績など、地元取材に結構こだわっていらっしゃるなと感じたところでございます」
- 「絵本の絵、自身の著書、映像、全ての組み合わせが見事にマッチしていて、本当に見やすいドキュメンタリーでした」
- 「信念というのは素晴らしいなと。努力というのは全てのものを本当に叶える。この中村哲という人は本当にすごいなと、物すごい感動を持ってこのドキュメンタリーを見終わることができました」
- 「実際に医師として赴任したアフガニスタンでは、まさに国土開発事業そのものを行った上で、「平和とは観念ではなく、実態である」と、現実社会でのリアリズムの重要性をじっと訴えているということを伝えている」
- 「見る人たちに何を伝えたいのかがよくわかる。さすがにドキュメンタリーは素晴らしいなということで、今回は大変嬉しく思いました」
- 「写真はあまり出てこなかったんですけど、子供が泥水に顔をつけている写真がすごくリアルな感じで心に残っています」
- 「アフガニスタンの人々のことを思い、その信念に基づいて活動されている姿をきちっと映している素晴らしい作品だったと思います」
- 「今回のTNCの番組は、地元や自分たちの地域にすごく誇りを持てるような構成になっているし、新しい取材がとても多かったのではないかと思いました」
- 「映像で、ご本人の生の語りで見せられると、中村さんの持っている思いや信念は紙ではなかなか伝わらないな、あれで伝えられるのはやっぱり映像の力だなと、半分嫉妬しながら見せていただきました」
- 「政府の助力はほとんどなかったと思いますし、無視されていた。その中でこれだけのことをしたというのは素晴らしいことですし、そういう方をドキュメンタリーの主役として取り上げたTNCには本当に頭が下がる思いです」
- 「最後の暗殺にもほとんど触れなかった。そういうショッキングなもの、あるいは争いごとを見せていくのではなくて、中村さんが本当にやりたかった平和の手段を見せていったというのは、素晴らしい構成だったと感じました」
- 「一つだけ注文をつけるとすると、放送時間です。以前のドキュメンタリーのときも言いましたけど、日曜日の深夜1時からの55分ということで、この時間帯にどのくらいの人が見たのかなというのが気になるところです」
- 「これをぜひ子供たちが見られる時間帯に放送していただきたいと思います。こういうものを見ると、全員ではないでしょうけど、一人でも次の中村哲が出てくる可能性があるので、夜中に流していてはもったいない」
- 「日本人が優れた活動をしていることについては、国を挙げてきちんと評価していくようにしていかないと、変わらないと思った。いい番組だけど、もうちょっとそういう部分にも触れたら良かったなと思いました」
- 「2008年にペシャワール会の現地スタッフだった伊藤和也さんがアフガンのゲリラに撃たれて亡くなるという事件がありました。このときは現地のスタッフが全部引き揚げる、中村さんも撤退するかしないかというかなりぎりぎりの判断を迫られる場面でした。それについて言及がなかったというのは一つ寂しかったなと思いました」
- 「蝶を見たいという非常に人間的な、私たちからすると、身近な人という一面もあったと思います。この番組では「蝶」というのが一つキーワードになり得たかと思います。もしそういうエピソードを織り込めば、番組のもう一つの柱になって、中村さんの姿を重層的にもっと深く描けたのではないかと思いました」
といったご意見を頂戴した。
番組制作担当者からは
- 「中村哲さんの関係者から話を聞いてもっと深掘りをしたら、キー局が作るような番組とは違うものが作れるのではないか。福岡のテレビ局に勤めている自分として、そして記者である自分としては、福岡にはこれほどすごい人がいたんだということを後世に残さないといけないと思いました」
- 「中村哲さんが書いた本が10冊ぐらいあるんですけれども、それを全部買って片っ端から読んで、これをどうやったら55分にまとめられるのかというところで本当に苦労しました」
- 「少年時代から亡くなるまでの伝記的なパートと、いろんな証言者から語っていただいて人物像を肉づけしてもらうパートとして、構成上いろいろと考えて作らせていただきました」
などの説明をした。
番組審議会事務局より
- 視聴者対応、レスポンスのご報告
6月に寄せられたご意見などの件数、および特徴的なものをご報告した。
過去の番組審議会
審議会 委員名簿
- 作成日
- 2020/07/22 14:46
- 最終更新日
- 2020/07/22 14:57