工藤会 最高幹部に判決へ(2)市民VS工藤会「戦う道選んだ」高まる暴追意識と北橋市長の決意 北九州市

2021年08月19日

死刑が求刑されている工藤会トップ。

8月24日の判決まであと5日。

容赦ない暴力の牙に、市民はどう立ち向かったのか。

暴力団排除運動の先頭に立つ北九州市長にも、覚悟と決意を聞きました。

ここにある、一本のカセットテープ。

今から約30年前、「北九州市暴力追放推進会議」が、市民たちの“戦う意識”を高めるために特別に作った歌が収められています。

◆北九州市暴力追放の歌 「住みよい まちを」(1993年3月制定)
「楽しく住みよいみんなのまちを 築こうがっちりスクラム組んで 
暴力締め出す勇気を集め 栄えるふるさと北九州を」

市民たちが戦っていた相手は、暴力団・工藤会でした。

1990年代、北九州の街は工藤会の暴力がはびこる無法地帯でした。

市民に高まる暴追意識に反発した工藤会は、みかじめ料の支払いを断った市民に向けて無差別発砲を始めました。

さらに、2000年代になると…

2003年には、暴追運動の先頭に立つ男性が経営するクラブに組員が手榴弾を投げ込みました。

◆店内にいた女性
「8時ジャストに急に戸が開いて、男の人が上から下まで黒い感じで、ズカズカズカって勢いよく入ってきて『おりゃー!』って言って物を投げた」

襲撃に使われたのは、爆発時の衝撃波で室内にいる敵を殺傷する「攻撃型手榴弾」。

店内は地獄と化します。

◆店内にいた女性
「ドーンと爆発して、座っていた女の子は焼かれて『熱い熱い』『イタイイタイイタイ』と。本当にここは日本なのか、戦場にいる感じ」

この襲撃で、12人が重軽傷を負いました。

その後も、街で暴力団排除の動きが高まるたびに銃弾が飛び交い、手榴弾が爆発しました。

そんな混乱の最中、新市長に就任したのが北橋健治氏でした。

北橋市長は、工藤会の存在が街に与えている影響に愕然としました。

◆北橋市長
「『非常に暮らしやすい 住みやすい街だ』とどんなにPRをしても、やはりこの治安の問題で、東京に本社がある企業も『こういう暴力事件のニュースが時々出るようでは、進出はしたくても出来ない』と。当時は“鉄冷え”という言葉もあった。新しい街おこし、産業作りが求められていただけに、このままでは街の将来は光が消えてしまうという大変危機感をもっていた」

―工藤会は怖いー

その恐怖が街に深く植え付けられた中、市民の感情を大きく揺さぶる事件が起きました。

2010年、工藤会は『長野会館』と名付けた組事務所を設置しました。

事務所近くには幼稚園や小学校があることから、市民たちは自主的に事務所の撤去を求めて立ち上がりました。

◆警察
「門を閉めなさい!君たちの行為は市民に不安を与えている!」

工藤会は組員を集めて威嚇しますが、市民は一歩も引きません。

そこで工藤会は、“いつもの手段”に出ました。

工藤会は、事務所撤去運動に参加していた自治会長宅に、拳銃を発砲したのです。

さらに北橋市長には、“市長や家族に危害を加える”という匿名の脅迫状が送り付けられました。

北橋市長と市民は、選択を迫られました。

◆北橋市長
「正面切って戦うということは、勇気がいります。でも、脅迫状を手にして、もう選択肢はないんですね、尻尾をまいて逃げ出すか、戦うかどちらかです。自分の場合は市民と一丸になって戦う道を選びました」

勇気を出して立ち上がった市民たち。

工藤会は約一年にわたる暴追運動に負け、長野会館を撤去しました。

この勝利が、北九州の暴追運動を盛り上げるきっかけになりました。

そして、長野会館問題から4年後。

警察は、工藤会トップの野村悟被告らを相次いで摘発する『頂上作戦』を開始しました。

野村被告らが街からいなくなると、北九州からぴたりと銃声が止みました。

◆北橋市長
「小倉の繁華街の地価が20数年ぶりに上昇に転じたとか、IT関連の企業誘致がここ数年増えている。いろんな意味でプラスの効果が出てきている」

Q頂上作戦がなかったら?

◆北橋市長
「観光の面でも、企業誘致の面でも、努力をしても一発の銃声、また襲撃事件で、それがまた水泡に帰してしまう。そういうことが繰り返されていったのではないかと」

暴力団と戦うことは勇気がいる。
それでも…という北橋市長の並々ならぬ覚悟。

次回は、野村被告の“逮捕の舞台裏”に迫ります。

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