プロ野球のドラフト会議が20日午後5時から行われる。12球団のうち９球団が前日の19日までにすべて異なる1位指名選手を公表する異例の展開の中、ドラフトならではの”ドラマ”が起こるか注目される。

　ソフトバンクは本番10日前に愛知・誉高のイヒネ・イツア内野手（18）の指名を公表。「1位で公表していただいたのは本当にうれしいこと。今はあまり不安はとかはない」と感激しながら”その時”を待つ心境を明かした。

　身長184センチ、体重82キロ。両親がナイジェリア出身で、名古屋市で生まれ育った。野球を始めたのは小3のとき。「だんだん上達するにつれて、こんな楽しいスポーツを将来の職業にできるなら最高なことだと感じた。そこから、野球選手になりたいとずっと思ってきた」。抱き続けてきた夢がついにかなう時が目前に迫っている。

　中学時代は控えで「うまい選手じゃなかった」というが、高2だった昨年、プロ入りにつながる大きな転機が訪れた。矢幡真也監督が明かす。「練習でしゃれたグラブさばきをしていたので、もしかしたらと思って”やってみろ”と言ったのがスタート」。外野手から遊撃手への転向。ソフトバンクは「センターラインの強化」をポイントに挙げ、現在不動の遊撃手としてチームを支える今宮健太の将来的な後継候補と位置付けて1位で指名することを明言。転向から1年しかたっておらず、伸びしろはたっぷりあるといえそうだ。

　50メートル走6秒2。遠投110メートル。自らの特長を「走攻守、全部。本当にうまいかどうかは別にして自信を持ってプレーしています」と言い切る。2015年にトリプルスリー（打率3割、30本塁打、30盗塁）を達成したソフトバンクの主砲柳田悠岐に憧れ、動画などで見た打ち方や構えを参考にしてきた。その柳田と同じユニホームを着る可能性が高まってきた。

　何よりも好きな食べ物はたい焼き。「たい焼きを食べて映画見て寝たら最高の生活。ずっと食べていたい」と話す表情は本当にうれしそうだ。取材当日、色紙にしたためたのは「人間は一人では生きていけない」。今まで多くの人に支えられてきたからこその言葉だという。

　ソフトバンクの1位指名公表は3年連続。昨年は重複も予想された風間球打（秋田・ノースアジア大明桜）の一本釣りを成功させた。今年も狙い通りの逸材を指名できるか。イヒネも胸を高鳴らせながらその瞬間を待ちわびている。

（TNC「ももスポ」・YouTtube「ももスポチャンネル」より／取材＝安枝遼）