少年「裁判に興味がなくて懲役だろうが少年院だろうが」 判決前に記者に語る 福岡の商業施設で女性刺殺

2022年07月22日

2020年、福岡市の商業施設で女性が殺害された事件で、殺人などの罪に問われている当時15歳の少年に、7月25日、判決が言い渡されます。

判決を前に、被告の少年が拘置所でTNCの記者の取材に応じました。

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<TNC記者に届いた手紙の一部>
「桜井(記者の名前)さんお久しぶりです。桜井さんが以前から気にしておられた事件のことについてお話をしようと思いました。直接会ってお伝えしたいなと思いました。本音で話をしたいなと強く思っています」

手紙の送り主は、殺人の罪などに問われている17歳の少年です。

起訴状などによりますと、少年(17)は2020年8月、福岡市中央区の商業施設で面識のない女性(当時21)を包丁で十数回刺して殺害したとされています。

TNCは事件後、約1年半にわたり少年と手紙のやりとりや拘置所での接見を行い、事件を起こした背景や動機の取材を試みました。

しかし、少年は事件について答えることは一切ありませんでした。

判決公判を前に少年は一体何を語るのか。

TNC記者が福岡拘置所を尋ねました。

◆記者「なぜ今になって事件のことを話す気になった?」
◆少年「まあ…歳も割と近いし、話しても大丈夫かなと思って」

◆記者「家の中の話をしたいんだけど、どんな家だった?」
◆少年「変わった家庭というのは、今振り返ると思いますね。教育環境も話し合いというよりは暴力、力で押し通すみたいな感じです。変わってるとかまともじゃないとか」

◆記者「他所と違うことに気づいたのは、いつ?」
◆少年「つい最近です。弁護士とかと話しをする中で、初めて気づいて自分ちは変わってたんだなと」

◆記者「今の自分がいるのは、その家庭に生まれたから?」
◆少年「誰かを痛めつけて分からせるのが親父の性格。親父の部分が強く影響を受けていたと思う」

少年は3人きょうだいの末っ子として九州南部で生まれ育ちました。

弁護側によると、少年は4歳離れた兄から首を絞めるなどの暴力を受けていた上に、家庭ではネグレクトのほか性的虐待も受け、小学2年の頃から学校でたびたび暴力行為が問題となっていたということです。

◆少年「最初は低学年の時から暴力を振るい始めたけど、誰かを殴ったりしてしまう自分が嫌いになった。当時は嫌でだいぶ悩んだりもしていたけど、相談できる人もいないし、言っても無駄だなと思って、小3の時に開き直ります。嫌悪感が薄れていった」

◆記者「人を殺したいと思ったことは?」
◆少年「結構何度も。殺したい気持ちは小3の頃から。心の中では『ぶっ殺してやりたい』っていう思いはありました」

少年の暴力性はどれほどのものだったのか。

7月6日の初公判で弁護側が読み上げた小学4年当時に少年を担任した女性教師の供述調書に、その内容が記されていました。

<供述調書より(少年の元担任教師)>
「教諭に対して『殺すぞ』と暴言を吐く」
「女の子の髪を引っ張る、腹を蹴る」
「ほかの児童の首を絞める」
「首を絞めた場面では教諭が仲裁に入ったので大事には至らなかったが、少年を見て命を狙いに来ていると感じた」
「少年は学校教育の限界を完全に超えていた」

小学4年当時の担任が指導の限界を感じていた強い暴力性ー。

その後、少年は児童自立支援施設などを転々として中学1年生で少年院に送られました。

そして、2020年8月、当時15歳だった少年は暴力行為で送致されていた少年院を仮退院しましたが、母親は少年を引き取ることを拒否。

このため少年は福岡県田川市の更生保護施設に入所しましたが、翌日に施設を脱走したのです。

その後、バスで福岡市に向かい、事件を起こしました。

◆少年「その時は怒りのまま感情のままに行動に移しました。実際にやってみたら、殺したのを目の当たりにしたら、やってしまったことに対して怖くなった。まあ、あと、躊躇なく刺し殺した自分のことも怖いなと思いました」

◆記者「遺族が君のことを悪魔のような少年と言っていた。自分のことを悪魔だと思う?」
◆少年「自分が感情的になった時は悪魔という表現が正しいというか恐ろしい自分だと思うと、悪魔的な部分もあるのかなと思います」

7月7日午前に行われた弁護側の被告人質問で、少年は被害者に対して「申し訳ない」と謝罪の言葉を口にしました。

しかし午後、被害者側の弁護士から更生の意思を聞かれると少年は「クズはクズのまま変われない」と語りました。

◆記者「午後の被告人質問で自分を『クズ』と言った。心変わりしたのはなぜ?」
◆少年「朝も午後も両方が自分だとは思います。人に対してコロコロ反応変えるのは小学生の頃から。丁寧に説明しても無駄だと。話をする労力が無駄だなと思って。施設内の生活が長かったので裁判に興味がなくて、懲役だろうが、少年院だろうが、結果としてどちらでもいいかなと」

「無駄」「興味がない」など投げやりともとれる言葉を口にする少年。

実際に少年の心理鑑定を行った専門家は、その真意をこう分析します。

◆山梨県立大 西澤哲教授
「正直言って彼ほどまでに不適切な養育環境が存在するというか、そこまでのケースはそんなに経験していない。人に弱みを見せて手当をしてもらって寄り添ってもらうという経験をしたことがない子だから、弱みを見せられない。すごく不安を抱えていて、おびえているんだけど、だけどそれは人に見せられないので、その分だけ開き直ったり強がったりしてしまうというなんかすごく痛々しい」

7月15日の論告求刑公判で、検察側は“保護処分による更生の見込みは非常に乏しい”として、少年に懲役10年以上15年以下の不定期刑を求刑しました。

一方、弁護側は“少年の抱える問題は、そのままだと再犯の可能性がある”“少年法55条で家庭裁判所に移送するべき”“その上で医療少年院で治療を受けさせるべき”と主張しました。

◆記者「法廷では遺族への謝罪もなかったけど、今は?」
◆少年「今も同じで変わりはない。謝罪を適当に言うのも良くないし、話を盛るのも良くないし、話を整理できていないし…。人を思いやる気持ち、自分が相手の立場だとしたらどう思うかとか、どうしても思うことができない」

◆記者「7月25日に判決だけど、今の気持ちは?」
◆少年「どうにせよ受け止めたいと思います」

◆記者「世間に出てきた時に、こうした過ちを繰り返さない自信はある?」
◆少年「気持ちとしては2度と人を殺したくない。でも自分次第だと思います。本当に変わりたいという気持ちがあれば、更生する事ができるかもしれないです。出た時にかんしゃくが起こるかどうかはその時になってみないと…。中での生活によります」

当時15歳の少年に「刑事罰」を科すべきか、それとも更生を目的にした「保護処分」とすべきか。

難しい判断を迫られる裁判官と裁判員。

判決公判は7月25日に開かれます。

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