「黒いダイヤ」ナマコ密漁が急増 背景に中国で需要増・価格高騰か 福岡沖で“620キロ密漁”の男ら逮捕

2023年04月25日


近年値段が高騰し「黒いダイヤ」とも言われる高級な水産資源「ナマコ」の密漁事件です。

山口県宇部市の漁業の男と、その息子と妻ら、あわせて5人が逮捕されました。

◆海上保安部の捜査員(2月28日)
「こちら海上保安庁。前方の小型艇、止まりなさい!止まりなさい!」

門司海上保安部が提供した容疑者追跡の映像。

再三の停船命令を無視して、猛スピードで逃走する漁船。

操っているのは、黒いダイヤとも呼ばれる高級食材「ナマコ」を密漁した疑いがある山口県宇部市の漁業・中野政吉ことキム・チョンギル容疑者(71)です。

◆記者リポート
「苅田港ではナマコが大量にとれることで有名なのですが、中でもクロナマコは中国で高値で取引されているということです」

密漁の舞台になったのは福岡県苅田町沖の海。

海上保安部によりますと、中野(キム)容疑者は地元・宇部市の港から船を出し、息子や妻と3人で苅田沖まではるばる遠征。

知事の許可なく潜水器具を使ってナマコ約620キロを密漁するなどした疑いがもたれています。

以前から中野(キム)容疑者一家の「ナマコ密漁」をマークしていた海上保安部は今年2月、宇部市の港に停泊していた中野容疑者の船の捜索に乗り出しました。

ところが…。

◆捜査員(2月28日)
「こちら海上保安庁。前方の小型艇、止まりなさい!前方の小型艇止まりなさい!止まりなさい!」

中野(キム)容疑者は捜査員に気づき、漁船で逃走したのです。

◆捜査員(2月28日)
「前方の小型艇、止まりなさい!止まりなさい!」

瀬戸内海を逃げに逃げた中野(キム)容疑者。

逃走距離は約300キロにも及びましたが、岡山県の倉敷沖で巡視艇が追いついたということです。

◆捜査員(3月1日)
「寄せて寄せて寄せて」

暗闇の中、息を殺して中野(キム)容疑者の漁船に近づく捜査員。

そしてー

◆捜査員(3月1日)
「おおおい!出てこい!どこおるや!出てきた?どこおる?どこどこどこ?わかっとるね。門司の海上保安部です。わかっとる?逃げとったやん、ずっと。なにしよったんずっと?」

◆捜査員
「無線で確保」

漁船の中に隠れていた中野(キム)容疑者を発見し、身柄を確保しました。

◆捜査員(3月1日)
「お前、逮捕状でとるんよ。あとで説明するけん。キツかったやろう?ずっと逃げて」

海上保安部は中野(キム)容疑者本人に加えて、息子・純一容疑者(48)と妻・ふじ枝容疑者(71)、さらに密漁された物と知りながらナマコを買い取った仲買人の佐藤由季容疑者(39)と競り人の嶋矢拓郎容疑者(37)のあわせて5人を漁業法違反などの容疑で逮捕しました。

貴重な水産資源である「ナマコ」を大漁に密漁された苅田町の漁業関係者はー

◆健稀丸水産 今村聡司さん
「密漁しているのは知っていたが、なかなか捕まらなかった。誰がしてるかわからんけど、夜とか来るから『たぶん密漁しているのだろう』という噂はずっとあった。まじめにルール守ってとっているこっち側からしたら腹立たしいのは腹立たしい」

中国での需要増加を受けて、近年「ナマコ」の値段は高騰していて、農林水産省のまとめによると、キロ当たりの卸値は全国平均で2868円と高値で取引されています。

価格の高騰を背景にナマコの密漁も急増していて、2020年には全国で1368件ー。

中には暴力団の資金源になっているケースもあるといいます。

調べに対し、密漁を認めているという中野(キム)容疑者は、犯行の動機についてー。

◆中野(キム)容疑者
「借金による生活で苦しかった」

海上保安部は、中野容疑者が密漁を繰り返していたとみて余罪を含めて調べています。

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