飯塚事件から31年 新たな目撃証言 「白い車に女児2人」 2度目の再審請求申し立て 福岡県

2023年06月15日


いまから31年前に福岡県飯塚市で小学生の女の子2人が殺害された、いわゆる「飯塚事件」。

元死刑囚に対する刑はすでに執行されていますが、2度目の再審請求=つまり裁判のやり直しを求める弁護団がその根拠としているのが「新たな目撃証言」です。

◆男性
「私の前を軽のワンボックスがゆっくり走っていた。おかっぱ姿の女の子がランドセルを背負ってこっちを見ていた」

男性がこう語るのは31年前の記憶。

車で移動中、追い越しざまに見た車に乗る2人の女の子の表情を忘れることができないと言います。

◆男性
「今まで見たことない、こわばったというか、恐怖におびえたような顔だった」

事件があったのは1992年2月。

飯塚市に住む当時小学1年の女の子2人が、かつての甘木市の八丁峠で帰らぬ人となって見つかりました。

事件から2年が経った1994年、福岡県警はDNA鑑定などを元に当初から捜査線上に浮かんでいた久間三千年(くま・みちとし)元死刑囚の逮捕に踏み切りました。

◆久間元死刑囚(逮捕前のインタビュー)
「私は見ず知らずの人間。2人と会ったこともない」

久間元死刑囚は逮捕されて以降、一貫して無罪を主張していましたが、1審・2審共に死刑を言い渡され、2006年、最高裁で死刑が確定しました。

そして2008年-

◆森英介 法相(2008年当時)
「本日、久間三千年の死刑を執行しました」

元死刑囚の家族は当時のDNA鑑定は信用できないなどとして、死刑執行後としては異例の再審請求を申し立てましたが、2021年、最高裁判所が退けました。

弁護団は福岡地裁に対し2度目となる再審請求を申し立てることに-

その請求の柱として弁護団が裁判所に提出した新たな証拠こそが、31年前の記憶を語る木村泰治さん(74)の目撃証言だったのです。

◆福岡地裁で証言した木村泰治さん
「あそこゼブラ状になってますよね。(不審者を)あそこで追い越してます」

木村さんは女の子2人が行方不明となった1992年2月20日、飯塚市の穂波西インターチェンジ付近を車で移動中、のろのろと走る白い軽のワンボックスを追い抜いたと言います。

◆木村泰治さん
「誰が運転しているのかなと思って隣の車を見た。坊主頭の細型の色白の人がドライバーで、後部座席におかっぱ姿の女の子がランドセル背負って、あと1人の女の子が後部座席でランドセルを置いて横たわっていた」
Q.そのときの女の子の表情
◆木村泰治さん
「今まで見たことない、こわばったというか、恐怖におびえたような顔だった」

女の子2人を乗せた白い軽ワンボックスカーを運転していたのは久間元死刑囚ではなく、短髪で細身の、色白の男性だったと言います。

事件から31年-

福岡地裁で5月31日、再審請求の証人尋問が行われ、木村さんは白いワンボックスカーと運転手の目撃情報について証言した後、再び現地を訪れカメラ取材に応じました。

Q.家族の反対を押し切ってでも証人として出ようと決めた思い
◆木村泰治さん
「最後に見たのは私しかいないのかなって。間違いなく女の子の顔は私が見た顔だったと。30年以上前の記憶は間違ってなかったと私は思います」

木村さんが目撃した細身の男性は飯塚事件と関係があるのか。

事件直後から深く取材を続けていた当時の記者が改めて話を聞きました。

Q.その後部座席に乗っていた女の子の顔、どっちだと思いますか?
◆木村泰治さん
「寝てた子がこっちだと思います」

Q.寝てた子の顔は見えた?
◆木村泰治さん
「こんな感じで寝てたかな」

Q.1秒か2秒のすれ違いざまで寝てた子の顔わかりますか?
◆木村泰治さん
「Aちゃんより少し細めのようにみえた、Bちゃんが」

Q.その(運転していた)丸坊主の男、もしも30年前の顔がそのままだとしたら、今見たらわかりますか?
◆木村泰治さん
「私はわかると思います」

女の子2人の遺体が見つかった日、前日に見た白い軽ワンボックスカーを不審に思っていた木村さんは、警察にその目撃情報を伝えていたとも言います。

Q.翌日、飯塚警察署に電話されたとのことだが、何時ごろ電話された?
◆木村泰治さん
「多分、午前9時過ぎにはしたと思う。一週間近く経ってたと思うけど、刑事の方が来られた」

Q.名刺はもらった?
◆木村泰治さん
「もらってない。刑事の方が言われたのは『あなたが見たのは軽じゃなくて普通車の紺色じゃなかった?』と言われた気がする」

紺の普通車とは警察がマークしていた久間元死刑囚の車のこと。

木村さんは女の子2人を乗せた白い軽ワンボックスカーの目撃情報を伝えましたが、警察は「当時、久間元死刑囚が乗っていた紺の車ではなかったのか」と確認しただけで、以来、警察からの連絡はなかったといいます。

Q.今でも自分が見た2人が被害者2人であって、久間元死刑囚はえん罪だと思われていますか?
◆木村泰治さん
「あの当時のDNA鑑定は初期のDNA鑑定で、DNA鑑定が第一の証拠。それが私はもう完全に崩れたと。それがはっきりしたから、尚更声をあげていろんな場に出てきた」

一貫して無罪を主張してきた久間元死刑囚。

木村さんの証言によって、再審の扉は開くのでしょうか。

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