相島に新名物「棒ずし」 1月14日から販売へ 玄界灘の魚で“離島の未来”を 福岡・新宮町

2023年01月13日

サムネイル
玄界灘に浮かぶ1周約5キロメートルの小さな離島「相島(あいのしま)」。

この島で新たな名物「棒ずし」が誕生し、14日からその販売が行われる予定です。

島民の手で生み出されたこの1本に込められた思いとはー。

福岡県新宮町の渡船場からフェリーで約20分。

辿り着いたのは相島。

到着するなり迎えてくれるのが、猫です。

相島は、別名「猫島」とも言われ、200匹を超える猫と島民が仲良く暮らすのどかな島です。

◆糸永源樹さん
「お待ちしていました。本日はよろしくお願いいたします」

糸永源樹さん、27歳です。

奈良県生まれ、大牟田市育ちと、相島とは縁もゆかりもありませんでしたが、趣味だった島めぐりの旅で相島に出会いました。

◆糸永源樹さん
「この辺は雑木林になってるんですけど、雑木林になっているからこそ活用できる。例えばアスレチックとか、考えれば考えるほどポテンシャルはあるので、考えれば考えるほど活用できるものがいっぱいあるのかなと思います」

島に魅力を感じた糸永さんは4年前、地域おこし協力隊として相島に移住することに。

しかし、島で生活していくうちにある課題が見えてきたといいます。

◆糸永源樹さん
「すごくポテンシャルが高くて魅力があるのにも関わらず、担い手がいなくて」

実は相島は、若者離れによる人口減少が止まらず、ピーク時1300人あまりだった人口は230人を切りました。

◆島民(90代女性)
「私がもう100歳になる。私たちの年代が多かですね」

◆島民(80代男性)
「ものすごい過疎化よ。今はみんなお年寄り」

◆島民(50代女性)
「高校がないから結局、働く場所もないからっていうのもあるかもしれませんけど。結局高校生になったら向こう(島外)に出るので、そうなったら就職が向こうになってしまう」

人口減少の原因の一つが、「職業の選択肢」が不足していることです。

◆糸永源樹さん
「(島で働く)60%から70%が漁師なんですけど、島には仕事の選択肢が限りなく少ないので。そこをつくっていかないといけないのかなと」

島では漁師以外の職業がほとんどなく、進学や就職のために島を出ていく若者が増加。

高齢化率は50%を越えました。

島で唯一の小中学校も生徒は合わせて30人ほどと、存続の危機にさらされています。

そこで、去年2月ー。

地域おこし協力隊の活動と並行して設立したのが、島の活性化を目指す会社「相島クルー」です。

目指すは、島の職業の選択肢を増やすこと。

目を付けたのは、相島産の「魚」です。

◆糸永源樹さん
「これはワラサになります。ブリの子供ですね。かなり新鮮で、目も透明度高いし、さっきまで生きてたので柔らかいです」

相島の漁の特徴は「一本釣り」。

網で大量に獲るのではなく、一本一本丁寧に釣り上げることから魚が傷みづらく、新鮮な旨味と食感が保たれるのだそう。

そんな、相島の一番の資源である魚を生かした加工品を生み出し、新たな産業を確立させます。

相島の活性化を目指し、島一番の資源である魚を使った加工品の開発。

第1弾は、島の人々とともに相島の名物となるものを考案しました。

◆糸永源樹さん
「干物とかかまぼことか加工品が色々あるんですけど、その中でも、魚をダイレクトに感じられるのはお寿司かなと思って棒寿司にしました」

棒寿司は、魚を酢締めするため、通常の寿司と比べ日持ちするのがポイントです。

そのため土産品として持ち帰ることができます。

製造を担うのは島の女性たちです。

糸永さんが声をかけ、集まりました。

◆製造スタッフ 樫村晴美さん(70代)
「やっぱり相島を盛り上げようって一生懸命思っとるよ。だけん協力せなねって思って。みんなからそう思われとっちゃない?」

製造スタッフは、島で唯一の寿司屋に弟子入りし、魚のさばき方はもちろん、米の炊き方まで、8カ月もの間みっちり修行を積みました。

◆製造スタッフ 三舩直美さん(50代)
「活性化と、知名度を上げて盛り上げようっていう気持ち」

◆「SUSHIさかなのしっぽ」店長 木下禎明さん
「やっぱり皆さん島のため、これから10年後のためを思って来てくれているので、学ぶ姿勢が違う。吸収するのも早い。島民自慢の一本になるんじゃないかと思ってます」

考案から約1年。

完成した『棒ずし』が、こちらです。

相島産のひじきや大葉が混ぜ込まれた酢飯には、相島近海で獲れた旬の魚が贅沢にのっています。

そのお味はー。

◆糸永源樹さん
「すごく上品な味で、今日もすごくおいしくできていると思います」
◆リポーター
「猫も狙ってますね」
◆糸永源樹さん
「あげないよ」
◆リポーター
「新名物としての仕上がりは?」
◆糸永源樹さん
「上々だと思います」

糸永さんも納得の仕上がりです。

一方、島の人々の反応はー。

◆島の漁師(60代)
「やっぱり新鮮な魚を使っとるのと、ごまの風味がいいね。島やけん魚しかないけんね。それをいろんな形でPRできればいいけどね」

◆島の中学生
「美味しいです。めちゃくちゃ魚の歯ごたえがあって。自分のお父さんが漁師なんですけど、島の魚を広める機会がここにもあって、めちゃくちゃ嬉しいですね」

評判は上々です。

棒寿司の本格販売を前に行われた試験販売では、約3時間で17本すべてが完売となりました。

◆観光客
「お土産に買いました」
◆観光客
「やっぱりここは猫が有名だと思うんですけど、それ以外にも良いお魚がとれるんだっていうのが知れて非常に良いと思います」

◆糸永源樹さん
「やっぱりみんなでつくってこれから島を盛り上げていこうというものが売れて、島のことをみんなが知ってくれるきっかけになってるのが目に見えてわかるので、すごく嬉しいです」

棒寿司は、1月14日から土日の数量限定で、フェリーの渡船場や新宮町の道の駅などで販売されます。

糸永さんは、棒寿司をきっかけに島に職業の選択肢を増やし、さらには若者離れを食い止めたいと話します。

◆糸永源樹さん
「『棒ずし』だけじゃ難しいなと思ってます。正直なところは。『棒ずし』は先駆けの一歩になっていて、ここを先駆けに動いていくと、10年後20年後っていうのは理想のものになるのかなと信じてやっています」

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