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「あまり褒めない」城島健司が和田毅に感服した日 金メダル消滅の翌日、重圧の中マウンドへ
22年間の現役生活に終止符を打った和田毅さんが語った自身の「最高の武器」、そして今の若手選手たちに対して抱く危機感とは?
球団フロントの実質トップとして新たな一歩を踏み出した城島健司CBOが貫く「王イズムの継承」、新役職就任の真意とは?
育成制度、大型補強、日米の野球界、そして福岡ソフトバンクホークスの未来…。
20年ぶりに復活する「黄金バッテリー」が初対談で本音を語る。
◇ ◇ ◇
対談の収録は球団の仕事始め前日、1月5日。城島健司チーフベースボールアドバイザー(CBO=最高野球責任者・48)にとって新役職で臨む“初仕事”だった。
昨年限りで現役を引退した和田毅さん(43)との対談時間はおよそ1時間半。「この(進行)通りにやっても面白くないでしょ。毅としゃべればいいんでしょ」。城島CBOは収録前の打ち合わせで笑い飛ばした通り、絶妙なトークでリードしていった。
収録スタジオで、2人の間に1枚の写真を置いた。全試合でホームチームが勝つ「内弁慶シリーズ」として語り継がれる2003年の日本シリーズ、第7戦でルーキーながら完投した和田さんと城島CBOが抱き合って日本一の喜びを分かち合うシーン。その瞬間を振り返りながら、城島CBOはもう一つの記憶を呼び起こした。
2004年夏。2人は野球日本代表史上初めて「オールプロ」で臨んだアテネ五輪に出場した。目標はもちろん金メダルだったが、準決勝で敗退。チームには重苦しい雰囲気が漂っていたという。翌日、3位決定戦の先発を託されたのは和田さん、バッテリーを組む捕手はもちろん城島CBO。負ければ何のメダルも持ち帰れない重圧の中で、和田さんは一度もリードを許さず5回2失点で勝ち投手になった。
城島「予選から全勝して、金メダルを取らなければいけないっていう雰囲気の中、(準決勝で)負けてからの毅の夜の過ごし方と、翌日の3位決定戦に臨むまでの姿は本当にすごかった。俺は試合に出続けていたから雰囲気にも慣れていたけど、ずっと投げていないピッチャーがいきなりマウンドに上がるわけだから、本当に毅のことを心配したもん。大丈夫かなって」
和田「あの時は、本当にお通夜みたいでした」
城島「(宿舎に戻る)バスの中からすごかったよな…」
和田「何気なく食堂に集まったじゃないですか。でも、誰も言葉を発さない。自分も一番年下で『これ誰がしゃべるんだろう』みたいな。すごい沈黙があった中で(宮本)慎也さんが『明日、3位を絶対、取りに行こう』って。みんなが『よしっ!』ってなった時に、城島さんが『準決勝の第2試合見に行くから、おまえも来い』って。一緒に見に行きましたよね」
城島「あの時は、ちょっと独特な雰囲気だった。あれはよう投げたよ。俺はあんまり褒めんけど、あれは大したもん。俺がピッチャーだったら投げたくないなって。二度と経験したくない」
和田「本当に経験したことのないプレッシャーというか。吐き気というか…」
城島「あんまり覚えてないというか、思い出したくないというか」
和田「本当に。日本での試合はある程度こうだったって出てくるけど、あの大会は結果がどうだったとか、どうやって抑えたとか全然覚えていないです」
城島「そんな感じの貴重な経験だったな」
2人にとって20年ぶりの「バッテリー復活」となったこの対談で、城島CBOは和田さんと過ごした濃密な日々の思い出話に花を咲かせた。「そういう経験を若い選手やプロ野球以外の人にも伝えていってほしい」。かけがえのない経験を「財産」と呼ぶ城島CBO自身もその役目を負う。
だからこそ、その言葉は強い。話題は自然とホークスの未来の話へ。時に神妙な面持ちになりながら、球団フロントの実質トップとしての考えを真っすぐに口にした。
CBOの役職内容には「1軍監督のアドバイザー」という業務もある。フロントの方針を小久保裕紀監督(53)と共有することも大きな役目だ。チームのかじ取り役をサポートする、捕手気質な面も垣間見せた。
「先輩(小久保監督)が1年目から出した成果というのを、われわれはかなり評価している。そういうことを本人は言いにくいだろうから、僕らが伝えたいとも思っている」
小久保監督は就任1年目で新人監督最多の91勝を挙げ、2位に13・5ゲーム差をつけて4年ぶりのリーグ制覇を成し遂げた。その結果はもちろん、若手の積極的な起用など、勝ちながら育成するという矛盾したミッションに挑み続けた「先輩」への思いは強い。
常勝軍団復活へ、その礎を築いてきた城島CBOはこれから和田さんを含むさまざまな人間と“バッテリー”を組んでいくはずだ。「まだまだ、聞き足りないでしょ?」。いたずらっぽくこちらに問いかけてきた姿にホークス、そして野球界への尽きない情熱があふれ出ていた。
(「和田毅×城島健司 18.44 未来へのバッテリー」ディレクター・鎌田真一郎)
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