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番組審議会から(第631回)

第631回番組審議会

議題 『すくえた命~太宰府主婦暴行死事件~』
2021年5月18日(火)20時00分~21時00分放送
出席委員 藤 井 克 已 委員長
進 藤 卓 也 副委員長
石 村 一 枝 委員
喜多村 浩 司 委員
田 中   徹 委員
中 村 ク ミ 委員
林 田   歩 委員
欠席委員 舘   賢 治 委員(レポート)
森   亨 弘 委員(レポート)

 TNCが去年9月から検証報道を続けている「太宰府主婦暴行死事件」の報道特別番組です。
 おととし10月20日早朝、福岡県太宰府市のインターネットカフェの駐車場で、佐賀県基山町の主婦・高畑瑠美さん(当時36)の遺体が見つかりました。普通の主婦だった瑠美さんが、被告らに約1カ月にわたり監禁され、激しい暴行を受けて亡くなるという非常に痛ましい事件でした。
 なぜ瑠美さんの命がむごたらしく失われてしまったのか。いかに残酷な事件だ ったのかを伝えると共に、「警察とは市民にとってどういう存在であるべきなのか」を問いかけます。
 番組の柱は大きく2つです。1つ目の柱は「なぜ瑠美さんが事件に巻き込まれたのか」。家族4人で幸せに暮らしていた主婦が、なぜ被告らと出会い、亡くなってしまったのか。取材班は被告自身や関係者証言を1年半かけて集めました。すると、主犯格の女が20年前に同じような事件を起こしていたことや、瑠美さんが亡くなる2年前に被告らと同居した後亡くなった女性がいることなどがわかりました。こうして集めた膨大な証言を基に、被告らの過去を掘り下げながら番組を進めることで、視聴者に悲惨な事件の全容をわかりやすく伝えられるよう構成しました。2つ目の柱は「佐賀県警の怠慢の追及です」。鳥栖警察署の対応を瑠美さんの異変と並行して描くことで、対応の問題点を整理しました。そして、追及によって佐賀県警がどういう対応を見せたのかを遺族が録音していた実際の音声や独自に入手した内部資料を交えて徹底検証しました。

委員からは

  • 明確に県警の怠慢が隠されていたと言い切られている。こういう報道の中で言い切られているということがすごいと思ったのと、よく調べてあったなと思いました。
  • 国が動いて、国会の中でいろんな話がなされた、そこまで普通はなかなかいかないものなんじゃないのかなと思うのに、よくそこまで持っていかれたなと。
  • 恐喝の方程式みたいな言葉が出ましたが、方程式があるんだったら、もっと未然に防げる方程式もあるだろうというふうなことを思いながら、人間のすごさを見せてもらった番組でした。
  • 改めて報道の力というのはすごいんだなというのを気づかされたというか、ちょっと鳥肌が立つぐらいの感じを受けましたし、武力ではなくて、三現主義に沿った報道ですよね。
  • スタッフの方が被害者に寄り添われて地道に取材をされたときの大変さだけじゃなくて、気持ちの持ち方、どんな距離感で接すればいいのかとか、そういういろんなことをずっと考えていて、もう一度報道の大切さとか力を認識させてもらった。
  • 骨太の見応えある報道番組でした。再現シーンを含めて見ましたけれども、相当つらい場面が多々ありましたが、執念を感じる丁寧な取材により、事件の痛ましさ、佐賀県警側の事件前後の対応の不適切さがあぶり出されていた。
  • 「良心は去った」という核心を突くナレーション、ローカル局とは思えない再現シーンのリアルさといい、本当に質の高い報道番組でした。
  • お恥ずかしいことですが、この事件を全く知らなくて、知らなかった私でも、全体としてはとても分かりやすくて、本当に内容が説明されているように感じました。
  • 佐賀県警の良心のところまで追っていって、何かちょっとかわいそうな気もしたんですけど、これはやっぱりマスコミしかできないことですし、一市民として、正義とは何かとか、そういうものを感じました。
  • この番組タイトルみたいに、やっぱり救えた命だったのではないかなということを非常に強く感じました。
  • 事件の悲惨さですとか、警察の対応の不備、それが十分に伝わる番組内容だったんじゃないかなというふうに思いました。
  • 非常に多くの関係者に取材を通してあって、背景を含めた事件の全容が非常に分かりやすく編集された番組だなというふうに思います。
  • 随所に再現映像が入れてあって、その映像自体もかなり衝撃的でしたけれども、事件の異様さ、悲惨さみたいなものが伝わってきた。
  • 裁判員裁判の裁判員の方も言われていましたように、警察が市民の相談にまともに向き合わないということは非常に危険なことだと思いますし、やっぱりそれは基本だと思いますので、そこはそれを徹底していただきたい、そういうふうに強く感じるような番組内容になっていたんじゃないか。
  • 硬派なドキュメンタリー番組はテレビ西日本さんでしか制作されていないのかなと思います。今、ほかのところはそういう意思がないというか、他局はもうやらないということになっているのかもしれませんけど、今後も視聴率のことはあると思いますけれども、ぜひ地域に根差したドキュメンタリー番組というものの制作を継続していただけたらというふうに思います。
  • この事件については各種の報道で知っているつもりでしたが、問題の本質については、この番組を見て初めて知りました。非常にあぶり出していただいている。
  • 本当に重い、痛ましい事件を長い時間、広く、そして深く取材をして、検証報道を続けられている。しかも20時だということで、本当に力を入れて、江湖に対して思いを伝えていこうという意志を非常に感じる。
  • よく調べて事実をきちっと伝えて、その信憑性で報道しているというのは、大変行程も工数もかかって大変だった中でリアルを想像させるにすばらしい番組だった
  • 本当に深く、広く取材をして、すごいドキュメントをつくられたなということでのTNCさんの報道の力に敬意を表したい。
  • 「すくえた命」。「すくえたかもしれない」とか、「すくえたのではないか」というふうなタイトルではなくて、明確にメッセージとして、救えた命なんだというふうに、TNCとしてこれを世に問うという力強いメッセージも伝わって、大変よかった。
  • 全体を通じて大変複雑で重いテーマなんですけれども、それを視聴者の方に何とか分かりやすく伝えようと、制作側の工夫、意図、思いまで伝わってくるような感じがして、大変好印象を持って拝見しました。
  • この事件は大変特異ではありますけど、でも、特別な事件ではないのではないか。ある意味、どうかすると誰の身にももしかしたら起こり得るかもしれない事件であったということまで考えさせられました。
  • 法律は一つなんですけど、まさに県警察というぐらい、各県によってその捜査の仕方、捜査の手法、取り上げ方が実は全然違うんだということ。県境のこちら側の警察は何も対応してくれないという、このある意味の恐ろしさ、矛盾、しかもそれが今回のように致命的なところまで至ってしまうかもしれないという警察がはらんでいる問題もしっかり描けたなと思います。
  • よくつくられていたと思いますし、事件の内容について、よく関係者、いろんな人にコメントなり求めていて、この努力たるや本当にすばらしい番組に仕上がっていったことを認めたい。
  • 最後のシーンが、結局判決の場で笑みを浮かべていたというのがあったと思うんですけれども、これで終わられると、私自身は、これで終わると制作の意図とは何だったんだろうなと実は思ってしまいました。
  • 県警側も11回にわたる相談の中で、態度を変える機会は幾らでもあったはずなのに変えなかった、そういうところがなぜなのかという報道をもう少ししてほしかった。
  • なぜ山本被告はこういう残忍さを身につけていったのかというのももう少し知りたい。突っ込み不足ではないか。
  • 犠牲者は出たかもしれないけど、その命が次に生きるものになるような、そういう展開が少しでも希望が見える終わり方になったらいいかなと思いました。
  • 1991年に暴力団対策法が施行されて、それまで警察は民事不介入を大原則としていたわけですけれども、それを転換していったという歴史がある。ただ、末端では、やはり民事不介入ということで対応している。これが問題ではないか。
  • 佐賀県警の杉内元本部長、それから、松下新本部長の会見や議会答弁は、本人の考えや意思によるものではなく、警察庁本庁の指示による規制された答弁にすぎないことは明らかですから、TNCとしては、警察庁長官から直接本件についての見解と対策を発言せざるを得ないような状況をつくり上げるしかありませんけれども、その点どうだろうか。
  • 最後の終わり方がどうやったらよかったんだろうみたいなことの検証までやっていただくと、「すくえた命」の言葉がすごく生きるような感じを私も受けました。
  • 杉内さんですね、前の本部長の件ですが、警察庁にいるときに、犯罪被害者の支援の一番先頭に立って活動していた方、犯罪被害者を助けようと、犯罪被害者の心情、気持ちというのが恐らく一番分かっていた方というふうに言ってもいいかと思います。人事の綾なんでしょうが、そういう方が今回佐賀県警のトップに立たれたということで、もしそういうくだりがあれば、もっと伝えられることがあった。彼女が突然転勤された、体調不良でしょうけど、恐らくその部分はやはり彼女のこれまでの来歴の部分が影響しているのではないかなと。彼女は実はそういう人なんだということがもしあれば、もうちょっと落差の部分が描けたのかもしれない。
  • まだ一審判決で、控訴して、まだこれから二審の裁判がかかるということ。一審判決で一部無罪判決が出ているということもあって、結論から言えば、完全に終わっていないというところ。それはどういう見せ方があるか分かりませんけど、そのくだり、裁判はまだ続くというような一言があったらよかった。
  • 組織論について少し深みが足らないのかなというふうに思いました。公安委員会がどういうものかというのをもう一回、いずれ番組で取り上げることがあったら紹介してほしい。警察を悪く言うのは、それは簡単なんですよ。なぜかといったら、権力を持っている人に対して悪く言うのは誰も文句を言いませんから、そうだ、そうだと言うんですよね。しかし、その権力をどう制御するかということになると、みんな知らないんですよ。それをぜひ報道機関としては紹介する、あるいは啓蒙する、そういうことをしていただきたいなというのが一つありました。
  • 裁判の量刑とか裁判の認定とかいうことは、単に行為だけを見ているんじゃなくて、周りのこと、状況、そういうのを考えて判決をするわけです。特に裁判員制度が始まって、これがものすごく機能するようになった。裁判員がこうやってマスコミの取材に応じる、それについて裁判所があまり文句を言わなくなってきたということもありまして、非常にいい制度に変わってきているんだというふうに、局のほうとして言っていただければよかったのかなと思っています。

などの意見を頂きました。

局からは

  • この番組は、一昨年の10月に太宰府市で発生した主婦の暴行死事件というものを追跡取材しまして、ご遺族からお話を伺うと、事前に佐賀県警に相談をしていたという事実であったり、あとは事件概要自体がすごく複雑な事件で、一家が10年近くにわたって被告たちに搾取されていたという裏事情などいろいろ見えてまいりましたので、TNCとして1年半にわたる調査報道を続けてきた成果として、一度番組にしようという話になって制作した番組でございます。
  • 見る上で気持ちが重くなる、それを我々が一番事実として知っている中でゴールデン帯に放送する。では、これをファミリー、家族などが皆さんで見られる機会もある中で、どういうふうに表現していくかというところが実は一番悩んだところでした。
  • 福岡県で起きたということを考えると、表現として暴力シーンを軽減したとしても、皆さんがどうしてもリアリティーを感じてしまうというところがあるので、そこは何とかカット割等でできるだけむごく見えないように、だけど、ここであまりにもひどい事件だったんだよということを表現できないと視聴者の皆さんが共感できないというところもありましたので、そこはかなり悩んだところでした。
  • 昨年の9月からこの調査報道を始めまして、3月までで44日間夕方のニュースの中でこの事件を取り上げました。そういう中で、コメンテーターの方とかの縁の中で国会議員の方まで話が上がりまして、実際に国会に話として上がったという経緯だった。
  • 杉内本部長の経歴とか、こういうのは日々のニュースの中では紹介はさせていただいたんですけれども、番組の中にどう出そうかというと、なかなか時間の制限があって難しかったかなというところが反省点。
  • 1年半向き合いながら、正直、ご遺族との向き合い方というのにずっと悩んだ1年半でした。ご遺族自身がメディアスクラムに疲弊されていて、取り上げられることを望んでおられませんでした。実は8か月間全くカメラを回さず、ずっとペン取材だけでやり続けました、そうした中でご遺族の信頼を得て、行方不明になられていたお兄さんも見つかったりとかして、そういう事件のキーマンがだんだん分かってくる中で信頼関係を築けた。
  • 最後の山本被告の笑っているシーンはどうなんだとか、ご遺族が見られてどう思うのかというところは、やはり我々としては一番考えたところで、実は逐一、こういう表現をしたいんだというのは相談しながら、亡くなった瑠美さんのお子さんもいらっしゃいますので、瑠美さんのお子さんたちの目に触れないようにとか、そういう配慮をしながら制作した番組でした。

などの説明をしました。

番組審議会事務局より

  • 視聴者レスポンスについて
    5月に寄せられた視聴者ご意見などの件数および特徴を書面にまとめてご報告しました。

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